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石が書く [本と雑誌]


石が書く (叢書 創造の小径)

石が書く (叢書 創造の小径)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2021/02/21
  • メディア: 単行本



長年あこがれた稀覯本を入手(上記リンクではなく、日本の古本屋さん https://www.kosho.or.jp/ にて発見購入)しまして、今日のんびり読破しておりました。

近代の思想家として有名なロジェ・カイヨワの著作ですが、無一文としては鉱物収集の人なので、ピクチャーストーン収集の偉大な先達というイメージです。

以前サンリオSF文庫の「妖精からSFへ」(https://tenkamutekinomuichi.blog.ss-blog.jp/2018-12-18)を読んだときに、フィクションを軽視せずに真正面から考察・分析していく姿勢に敬服を覚えたものですが、今回の本はまさしく、ピクチャーストーン・絵画石や瑪瑙の収集家としてのカイヨワの視点が描かれています。

何よりも貴重なコレクションの図版を楽しみにしておりまして、時折ネットに転がってるのを垣間見ていたものも含め、まさに垂涎のコレクション…

特に《城館》と銘打たれた標本(産地不詳)は、ピクチャーストーンとしてはある意味究極で、いくつもの窓の空いた城塞から窓に映る人影、空を舞う鳥たちに、画面を引き割く雷光までが形成されていた、もう感激を通り超えてうろたえる品物

カイヨワ自身も、何人にも見せたところ、だれもが初見ではトリックとして疑わなかった(よく観察してみてようやく自然の産物だと納得したそうな)というから相当です。

他にもコレクターにとって垂涎の絵画石が多く掲載されていて、いやはや。

フランス国立自然史博物館には、彼のコレクションが遺贈されているといいますし、いつか行きたい外国の有力候補になりますね。

さて本書は(自分にとっては)意外なことに図録ではないので(笑)、カイヨワによる石への想いがじっくりとつづられています。

人間の手になる芸術と、自然が生み出した石などの偶然による芸術を同列に見て思いをはせる、と言うのは、カイヨワならではの視点、論点なのかもしれません。

コレクターの先達として大変刺激になるもので、ここまで想像豊かに石を見れる、語れるというのは、なんというか素直にうらやましくなります。

そしてカイヨワ一流の美しい文章でつづられていますが、根底に流れるのは「ほら、このいい感じのい石、良いでしょ?どお?」といった、少年のような無邪気な楽しさではないかなあ、と思いながら楽しく読んでおりました。

訳者の岡谷先生の解説には、無一文のように石の面しか知らない人でも理解できる、カイヨワの人物像や足跡が、簡潔ながらわかりやすく丁寧にまとめられており、こちらもようやく「カイヨワの顔」が見えた感じがして大変良い文章でした。

うーん、この本が絶版なんてもったいないですね。ぜひ復刊してほしいです。

素晴らしい読書でした。おすすめ。
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