感染症疫学のためのデータ分析入門 [本と雑誌]
のんびり読んでいた本を読了。
自他ともに「8割おじさん」と認める西浦先生の著書です。まあ8割おじさんの呼び名も言われなくなって久しいですが。言われない世界の方が、平和で良いですよね、西浦先生。
さておき、日本における数少ない(らしい)感染症疫学の専門教授、西浦先生とその研究室が全力で、後進のために書き上げた教科書です。
そう、教科書です。前著のような読み物ではありません。
なのでこの学問に興味があるのでなければ読む本ではないでしょう。僕はこのコロナ禍において、国防の最前線に立っていたこの学問がどんなものか、その一端でも触れられれば、ということで読んでみた次第。
内容としてはまさに教科書で、感染症疫学という学問の成り立ちと歴史から始まり、HICやSARS、COVID-19などの実例をサンプルに、この学問の組み立てと、数式の成り立ち、解説などの内容になります。
また実践的な疫学として、調査の手法や酒類、防疫の手法と効果、選択肢などが詳説されています。
まあ例によって半分も理解できてはおりませんが、それでも色々と勉強になる内容です。
海外からの渡航者への検疫が自分が考えた以上に重要であるとか、基本的に感染症対策はマップ兵器の打ち合いである(恐ろしいなもう)とか、分科会の先生方の提言がどういうところに根差したものであるかと言うのがいくらか理解できたのは期待通りの成果でした。
ほんと、ウィルスとの闘いはマップ兵器の打ち合いです。
感染者を1個体見逃したとして、そこから広がる感染者はその個体を中心とした範囲で広がるところとか、逆に検疫で陽性者を一人隔離できれば、そこを起点に広がるはずだった感染を範囲で止められるとか。
ゲーム脳で行くとマップ兵器ですねー、こういう概念は。
最前線で戦われている皆様のご苦労に改めて敬意を表します。
最後に1節ありました、西浦先生の「反省メモ」は、短いながらも身につまされる思いに胸が痛くなりました。GOTO行政はすべからくクソですな。
良い読書でした。