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検証 ナチスは「良いこと」もしたのか? [本と雑誌]



小野寺拓也さん、田野大輔さんの新刊。ナチス研究で定評のある方々です。
特に田野さんは本棚自作の名手?でもあります。

昨今「ナチスは良い事もしたんだよ」というう言説をSNS上でよく見かけます。

端的に言って間違った認識なのですが、「アウトバーンを建設して失業者を減らし、モータリゼーションを進めた」「第一次世界大戦後の不景気を短期間で立て直した」「有給休暇や観光旅行を推し進めて労働者を保護した」など、一見すると「良い事」と見える事実とともに語られるので、自分の様な「漠然とナチスって悪い連中だと思ってる」ような層は揺らいでしまいます。

本書はそういった(危ない)風潮へのカウンターを意図して書かれた本です。
それだけに内容は明快で大変読みやすい構成になっており、具体的にSNSで流布する「ナチスがした良いこと」を1つ1つ例として挙げて、それがどのような背景で行われ、どう関連付けられるかというのを詳説して下さっています。

ある意味最も価値のある論は、冒頭の「はじめに」に整理されており、ある「事実」から、一足飛びに短絡的評価にたどり着いて信じ込んでしまうことの危なさ、それがどのような間違いであるのか、が論じられており、これはナチの所業に限った話ではなく、ネット上の情報に踊らされる自分のようなSNSユーザーとしてはとても根本的な点を指摘されたようで、正座して謹聴する必要があるなと思いました。
これは試し読みできるので是非ご一読ください。(URL:https://www.iwanami.co.jp/moreinfo/tachiyomi/2710800.pdf

読んでみての感想としては「ナチスとはドイツ国民に対して壮大な詐欺を仕掛けて大成功した詐欺師集団であった」という感じ。(最後は破滅したので結果は伴いませんでしたが)

民衆を喜ばせた数々の施策(良いこと)は、結局どれも尻切れトンボで終わってるから成果は出てないし、有名なドイツ機甲師団を作り上げた膨大な国費も、紐解いてみれば踏み倒すこと前提の借金で賄っていたので、詐欺師としては極めて優秀ですが、為政者としては極めて無能、というか悪質。

とはいえ民衆はこういう詐術に引っかかり、騙されてしまうこと。
そして詐術自体よりも遥かに恐ろしい「無言による肯定」などの消極的支持・同調圧力・忖度が、ホロコーストなどの絶対悪を許してしまったことに衝撃を受けました。

なんだか砂最近見聞きしますよね、日本でも。

投票率の著しい低下と白票信仰による自民党一強状態(無言の肯定)や、維新の会と在阪テレビジョン放送局(実体の無い成果をメディアで喧伝して民衆の支持を得る手法)、ジャニー喜多川による40年以上もの性暴力と忖度して報じないテレビ各局(忖度と同調圧力)、などなど。

読みながら、このまま進んだ先の日本の未来を想像して暗雲と怖くなってしまいました。
日本の主権者は我々有権者一人一人なのですから、投票に行って対立候補に投票しましょう。
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