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1100日間の葛藤 [本と雑誌]


1100日間の葛藤 新型コロナ・パンデミック、専門家たちの記録

1100日間の葛藤 新型コロナ・パンデミック、専門家たちの記録

  • 作者: 尾身 茂
  • 出版社/メーカー: 日経BP
  • 発売日: 2023/09/22
  • メディア: Kindle版



noteに感想書いたので、よろしければどうぞ

https://note.com/takosuke2200/n/n1ea97478da5e
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検証 ナチスは「良いこと」もしたのか? [本と雑誌]



小野寺拓也さん、田野大輔さんの新刊。ナチス研究で定評のある方々です。
特に田野さんは本棚自作の名手?でもあります。

昨今「ナチスは良い事もしたんだよ」というう言説をSNS上でよく見かけます。

端的に言って間違った認識なのですが、「アウトバーンを建設して失業者を減らし、モータリゼーションを進めた」「第一次世界大戦後の不景気を短期間で立て直した」「有給休暇や観光旅行を推し進めて労働者を保護した」など、一見すると「良い事」と見える事実とともに語られるので、自分の様な「漠然とナチスって悪い連中だと思ってる」ような層は揺らいでしまいます。

本書はそういった(危ない)風潮へのカウンターを意図して書かれた本です。
それだけに内容は明快で大変読みやすい構成になっており、具体的にSNSで流布する「ナチスがした良いこと」を1つ1つ例として挙げて、それがどのような背景で行われ、どう関連付けられるかというのを詳説して下さっています。

ある意味最も価値のある論は、冒頭の「はじめに」に整理されており、ある「事実」から、一足飛びに短絡的評価にたどり着いて信じ込んでしまうことの危なさ、それがどのような間違いであるのか、が論じられており、これはナチの所業に限った話ではなく、ネット上の情報に踊らされる自分のようなSNSユーザーとしてはとても根本的な点を指摘されたようで、正座して謹聴する必要があるなと思いました。
これは試し読みできるので是非ご一読ください。(URL:https://www.iwanami.co.jp/moreinfo/tachiyomi/2710800.pdf

読んでみての感想としては「ナチスとはドイツ国民に対して壮大な詐欺を仕掛けて大成功した詐欺師集団であった」という感じ。(最後は破滅したので結果は伴いませんでしたが)

民衆を喜ばせた数々の施策(良いこと)は、結局どれも尻切れトンボで終わってるから成果は出てないし、有名なドイツ機甲師団を作り上げた膨大な国費も、紐解いてみれば踏み倒すこと前提の借金で賄っていたので、詐欺師としては極めて優秀ですが、為政者としては極めて無能、というか悪質。

とはいえ民衆はこういう詐術に引っかかり、騙されてしまうこと。
そして詐術自体よりも遥かに恐ろしい「無言による肯定」などの消極的支持・同調圧力・忖度が、ホロコーストなどの絶対悪を許してしまったことに衝撃を受けました。

なんだか砂最近見聞きしますよね、日本でも。

投票率の著しい低下と白票信仰による自民党一強状態(無言の肯定)や、維新の会と在阪テレビジョン放送局(実体の無い成果をメディアで喧伝して民衆の支持を得る手法)、ジャニー喜多川による40年以上もの性暴力と忖度して報じないテレビ各局(忖度と同調圧力)、などなど。

読みながら、このまま進んだ先の日本の未来を想像して暗雲と怖くなってしまいました。
日本の主権者は我々有権者一人一人なのですから、投票に行って対立候補に投票しましょう。
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未完の敗戦 [本と雑誌]



しばらく前に読了しておりました。

戦史研究もされている山崎さんの著書。
日本の政権による、新型コロナ対応や東京五輪強行、安倍晋三を特別扱いした国葬の強行などの、人を粗末に扱い、分断を推進する動機は何なのか、をいくらか解剖できればと手に取りました。

ブラウザゲーム「艦隊これくしょん」をプレイする前から近代史には興味があり、旧日本軍や当時の政府のやりようを知るにつけ憤慨を抱いており、プレイを通してより深く知るにつけてそれは日々増しておりました。
そのあたりの自分なりの理解が出来上がって来た末に、現在の政権、特に第二次安倍政権以降の自民党支配による政治には、第二次大戦前の政治と重なる面が多いことにこの数年感じておりまして。
丁度そういう論調の発言を繰り返されている著者に共感を覚え、著書を手に取った次第です。

読んだ感想としては、期待通りというか期待以上というか、ありていに言って怖くなりました…。
自分が感じていた以上に、今の自民党は戦前の政府の精神・観衆を継承している度合いが強く、ほぼそのまま同じことをしているのでは、とさえ思えます。

戦後に2,3年だけ行われた戦争責任の総括が、朝鮮戦争勃発により頓挫し、菅もプリズンから数多の戦犯が放たれ、権力を取り戻したことは、この国の大きな不幸の源泉であると強く感じました。
朝鮮戦争により、日本の敗戦処理は追えることができなかったのです。
「未完の敗戦」とは、良くつけられたタイトルだと思いました。

怖いですが読んでよかったと思える本です。
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政治と報道 [本と雑誌]


政治と報道 報道不信の根源 (扶桑社新書)

政治と報道 報道不信の根源 (扶桑社新書)

  • 作者: 上西 充子
  • 出版社/メーカー: 扶桑社
  • 発売日: 2021/02/28
  • メディア: 新書



のんびり読んでいた本を読了。
ツィッターで流れてきて興味を持った本です。

日本の衰退が誰の目にも明らかな昨今、テレビやネットでニュースを見ていて「何かおかしいな?」と感じる方は多いと思います。
ですが、その違和感を「具体的に捉えよう」、あるいは「言語化しよう」とすると、なんだかわからなくなってしまう。そんな経験はありませんでしょうか。

かくいう自分もそんなモヤモヤを抱えたまま大分長いこと居たのですが、そのモヤモヤをどう具体化すればよいのか、の、参考になる本でした。

著者の上西 充子さんは法政大学の先生だそうで、報道に触れる中で常々感じていた問題意識をいくつか本にしてくださっています。本書はそのうちの1冊になりますね。
「ごはん論法」という言葉を定着させたことで知られているそうですが、寡聞にして自分は知らず。ですがその流れで彼女のツィートが流れてくるようになって、興味を持って読んだ次第です。

読んだ感触としては、上記のモヤモヤを(著者の視点からの分析ではありますが)例を挙げながら具体的に解きほぐしていくので、自分で報道を見たり読んだりするときに、一歩下がって吟味する際の手引きになります。
文体も口語体で大変読みやすく、とっつきやすい本でした。自分はのんびり読んでましたが、腰を据えて読めば多分2時間ぐらいで読めるボリュームで、読みやすく良い本です。
言説の姿勢としては与党政権に批判的な方向(自分もその方向なので共感は強かったです)が、与党支持の方にも、報道を読み解く際の良い手引きになると思うので、お勧めしたいですね。

読み終わって少し経ったので反芻しながら感想を書いていますが、多くの「気づき」を与えてくれて、考えさせてくださる本です。考えさせる本は良い本です。

本書の中では、マスコミが大事にしている「両論併記」に伴う留意点や、速報記事に見られる「~~~と首相発言」といった政治家の発言をそのまま切り取って報じる短い記事などの問題点への指摘が、特に重点的になされています。

これらの指摘を見て、俺自身も政治報道に関する大きな問題点として「客観性が致命的に欠如しているのではないか」という考えに至る事が出来ました。まあこれが正しいかはわからないので今後その点に注意してみていくってだけではありますが。

例えば、本書で主なサンプルとして大きく取り上げられている「桜を見る会」をめぐるスクープ報道に関して、その発端は、毎年行われていたこの会合を知らなかったある編集長が「これはおかしいぞ」と思ったことだったそうです。

朝日や読売、毎日など、そうそうたる大手メディアの記者たちは、この行事を熟知しているが故に疑問を持たなかったため、あの騒ぎまで長年行われていたこの行事に全く疑問を持たなかったそうです。
彼らはこの行事を詳しく知っていて政治家ともここで仲良くしている、という内部の視点・主観の中に居るがゆえに、スクープのすぐそば、どころか内部に居ながらそのスクープに気付かなかったわけですが、この行事を知らなかった、外部の編集長からすれば、そこには明確な違和感があったことが詳説されていました。

また本書で危惧されている、記者クラブ所属記者が取材対象の政治家と距離が近すぎてしまう問題、政治家主催のオフレコ懇談会にネタを求めていくが故に、政治家の懐に取り込まれてしまう問題。それにより報道に手心が加わっていると危惧される点。これは記者と政治家の視点が近づき、その主観で記事を書き、報道するが故に起きる問題ではないかと思いました。
「桜を見る会」のように、客観的な視点を持つ人材がいれば、これらからも埋もれているスクープ、もしくは報道対象が出てくるのではないかしら。

俺がこう考えるには理由があり、身に覚えがあるからです。

俺はソフトウェア開発者なのでプログラムを書いてはそれを動かして飯食ってますが、プログラマは自分のプログラムが正しいと思って書いてても、これをそのまま動かすと面白いぐらいに不具合が山と出るのです(注:プログラマ本人にとっては面白くありません)。
困ったことに、プログラマは自分の書いたプログラムにある不具合を見つけるのが苦手です。何故かというと、正しいと思って書いているから。言い換えれば主観で書いているからです。
これだと商売にならないので、プログラム開発には、第三者によるレビューという工程が存在します。プログラマの主観にとらわれない第三者がプログラムを読んで、間違いを指摘するのです。プログラムした当人の主観にとらわれない団参者が客観的に問題を指摘することで、プログラムはようやく製品として通用するソフトウェアになるのです(ほかにもテストとかいろいろあるのですが本題ではないのでここでは省きます)

こう考えてみると、上西さんの本書でも、現場の記者を離れた客観的視点によってようやく指摘が可能になった例がいくつも取り上げられています。「桜を見る会」の経緯などはまさにその典型でした。
本書で問題意識を投げかけられている現役の記者たちは、主観で記事を書いているので、記事に含まれた問題に気付かないのではないかと思います。

もう一つ、両論併記に伴う問題点にも、客観性が欠けているからではと、自分には思えました。
記者の大事にする両論併記の目的は、報道の公正さを保つことです。
方法としては、与党の意見と野党の意見を併記するとか、与党の立場と野党の立場を併記するとかで行われていますが、俺から見ると、この方法では公正さは到底保てない、やり方を根本的に間違っているように思えました。

例えば与党の意見と野党の意見を併記する、というのは、言い換えれば与党の主観と野党の主観を併記する、ということです。これは主観と主観を並べて書いているだけで、第三者の視点がありません。
この構造では公正な報道には到底なりえません。主観と主観の併記では視野があまりにも狭すぎて、それらが国民の目にどう映るのか、国民にとってどういう意味を持つのか、どのような未来が想起されるのかが全く見えません。
この構図は、与党と野党は尊重されていますが、肝心の国民が尊重されていないのです。つまり両論併記では、構造的に公正な政治報道にはなりえない、不可能なのです。
政治報道は、まずこの呪いのような強固な構造から抜け出す必要があるでしょう。

新聞などのメディア、また政治報道というものは、歴史が長い世界です。それだけに、その長い歴史で積み重ねられてきた文化で硬直し、とらわれているのでは、というのが本書を読んで感じた、政治と報道に関する危惧です。
本書で取り上げられている毎日新聞デジタルの取り組みは評価でき、成果もあげていますが、それでも従来の硬直した政治報道の枠内での変革なので、未だ主観にとらわれている印象を受けます。

とはいえ、そういう凝り固まったものがそう簡単に変革できるはずもないので、どうすればよいか、というのはなかなか難しいですね。
自分が思いつくのでは、やはりレビュー工程がどこかに欲しいなと思います。
速報記事では時間的に無理ですが、定期的に報道業界外の視点で記事を見てもらい、指摘を受けるプロセスをはさむ。指摘してもらったからと言ってすぐに変革できるわけではないので、それを時間をかけて繰り返しながら、指摘と指摘に対する改善を積み重ねていくのが良いのではないでしょうか。

レビューしてもらう人は、報道業界外の日本人だけでなく、海外の人にも見てもらいたいですね。
最近ようやく表で騒がれるようになってくれた、ジャニーズ事務所の性的暴行被害のスクープは、BBCの報道が契機でした。この問題は僕ら日本人は大体知ってましたし、芸能界・メディア業界の人たちにとっては常識でした。ですがスクープとなり、社会を動かす流れになるためには、海外メディアの目という客観的な視点が必要だった。この構図は本書で詳しく解説されている「桜を見る会」がスクープ化した経緯と大変良く似ています。
色々なものがグローバル化してきている今の時代、報道もグローバル化し、世界とまじりあっていく必要があるのでは、と、言うことも、本書を読んでいて考えたことです。

久しぶりに長い感想文になりました。
読みながらあれこれ考えさせてくださり、さらには今後の考察の参考にも大変なった、素晴らしい読書だったと思います。毎回書いていることですが、考えさせてくれる本は良い本です。

大変良い読書でした。お勧めです。
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ストーンヘンジ ――巨石文化の歴史と謎 [本と雑誌]


ストーンヘンジ ――巨石文化の歴史と謎 (筑摩選書 246)

ストーンヘンジ ――巨石文化の歴史と謎 (筑摩選書 246)

  • 作者: 山田 英春
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2023/01/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



のんびり読み進めていた本を読了。

模様石界隈ではおなじみ、山田英春さんの著作。
ストーンヘンジを愛してやまない山田さんが収集した、執筆時点で最新の研究成果と、それまでに連なったストーンヘンジ調査の歴史の総まとめです。

山田さん模様石のコレクターとして石界隈には有名ですが、巨石を求めて世界中に出かけては写真に収めている熱心な巨石愛好家(研究家、と言っていいのかはちょっとわからない)でもあり、なかでもストーンヘンジは好きで何度となく現地に行ったそうです。

「ストーンヘンジに関して、日本では1980年代以降まとまった形での考古学的解説書が出ていない。この長い空白をきちんと埋めたいいう思いがあった」(あとがきより引用)

ストーンヘンジと言えばミステリーがつきものですが、山田さんがおっしゃるように考古学の視点でどういう物か、というのは、そういえば読んだことがなく。渡りに船、とばかりに手に取りました。

先に結論を書いてしまうと「いまだに確かなことはわからない」のですが、それでも執筆時点での最新の分析と、積み重ねられた考古学的調査や周辺の調査により、だいぶ多くのことが近年分かったことが読み取れました。

本書の特徴として面白く感じたのは、ストーンヘンジの調査にあたった歴代の人物とその成果を連綿と描いている点です。現代のわれわれが、この奇妙な環状列石に引き付けられるのと同じように、過去にも様々な人物がこの遺跡を前にしてそれぞれの空想や調査を積み重ねていく様は実に魅力的で浪漫があり、読みごたえがありました。

本書によれば、これまでの調査や分析で、ストーンヘンジ周辺の遺跡とのかかわりもわかってきており、ただでさえ巨大な遺跡が、さらにより広い規模での遺跡群であるとのこと。
ひょっとしなくても、今後も範囲や調査の広がりが期待できることでしょう。そのころにまた本にまとまると良いと思いました。

とても楽しい読書でした。お勧め。

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多様性の科学 [本と雑誌]


多様性の科学 画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織

多様性の科学 画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織

  • 作者: マシュー・サイド
  • 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発売日: 2021/06/25
  • メディア: Kindle版



社内掲示板で同じ住人から教えてもらった本。

ここ数年の社会・世界の混乱を見ていて多様性の重要性を認識・公言し始めたはいいが、ちゃんと系統だって学んでないなあ、と思っていた時に知ったので、これ幸いと読んでみました。

これの前に日本学術会議の多様性に関する講演(2022年秋ごろかな)を見たりはしていたのですが、あれはいかんせん1本1本の発表が短くて、面白くはあったけど踏み込めなかった感がしていました。これはもっと網羅的に具体的なテーマをいくつか例にして解説しています。

先に全体の感想を書いてしまうと、まあ面白かった。この手の本では久々に自分にヒットしました。
最初の章を読んで、面白いな、と思ってから、最後まで、ああ面白かった、が途切れなかったのでエンタメとしても十分に面白いです。

章立てというか、構成もよくできています。
まず9.11テロにおけるCIAの大失態で読者をひきつけつつ、記憶のどこかにある近代の事例を題材に、多様性に関するテーマを一つずつ解説、考察していきます。

随分話が広がったなあ、というあたりで、最後の章でいよいよ、読者が期待するであろう、実際に身近で運用するには、という話で結ぶ。

見事と呼ぶほかはありません。この著者の他の著作も読んでみたくなる見事な面白さでした。

内容は、タイトルにあるように多様性に関するレポートや検証の紹介、解説です。

一言で多様性と言っても、自分がイメージしていた「画一的ではない雑多ななにか」という漠然としたものにとどまらず、どのようなケース・モデルが成果につながり、それは何故か、どう働いたと考えられるか、というのが読みやすい文章と構成でつづられています。
読みやすいからと言って決してレベルが低いわけではなく、高度なことを、読みやすく書くことに成功してるので、著者の筆力が察せられます。

これを読んだからと言って、必ずしも劇的に自分の世界が変わるわけではないかもしれませんが(とはいえそれだけの威力のある内容であると思いました)、行き詰ったときに思い出してみると、ヒントになるようなことが沢山盛り込まれています。

そういった「気づきのきっかけ」にあふれている本でした。

例えば、ちょっと政治の話をしてしまいますが(うちのブログ見てる人には今更なおことわりですね)近年自分の大きな疑問が「財務省ってすごい頭のいいエリートが集まってるはずなのに、なぜあんな理屈に合わない事ばかりするのか」というのがあって、どうにも理解できないのですが、これに描かれているいくつかのケースが、あてはまる気がします。ちょうど冒頭のCIAの病巣が、まさにそのままという感じで、他にもいくつか。
財務省の人にぜひ読んで欲しい本ですね笑。

読み終わった後、少しググってみたらベストセラーに入ってるみたいですね。
この本が広く読まれているなら、世の中少しは明るくなることが期待できる、かもしれません。

大変素晴らしい読書でした。お勧めです。
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石が書く(新装版) [本と雑誌]


石が書く

石が書く

  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2022/08/26
  • メディア: 単行本



内容の感想に関しては、旧版手に入れたときに書いたので。(リンク
再読して改めて、という感じです。

再読と言っても、訳者も変わりましたので色々違うのですが、読んだ感触としては、旧版とそれほど差異は感じません。自分はシャーロック=ホームズなどは角川版と創元推理社判と読み比べてますが、あれほどの雰囲気の違いは無いですね。

中古市場で大分プレミアがついてしまった旧版と違い、手に取りやすく、内容は遜色ないということで純粋に読みたい方はこちらがが良いと思います。

再版の企画を進めてくださった山田英春さんは模様石の収集家として有名ですが、その原点がこの本であったそうで、思い入れはひとしおだったそうです。
その熱意がこうして実を結んだことは、鉱物を愛好する一人として大変うれしく思います。本当にありがとうございました。

カイヨワの視点で見る模様石は普段自分がやるような、何々に見える、といった「見立て」とはまた一線違っていて興味深いです。
人の手で描かれた絵画と、自然が作り出し、見るためには切断研摩を必要とするこれら模様石とを真正面から比較し論じるというのは、なかなか自分では持てない視点ですので面白い。

お勧めの1冊です。

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BRUTUS(ブルータス) 2022年 9月15日号 No.969 [本当においしいドーナツ] [本と雑誌]


BRUTUS(ブルータス) 2022年 9月15日号 No.969 [本当においしいドーナツ]

BRUTUS(ブルータス) 2022年 9月15日号 No.969 [本当においしいドーナツ]

  • 出版社/メーカー: マガジンハウス
  • 発売日: 2022/09/01
  • メディア: 雑誌



なんだか無性に甘いものに癒されたいなあ、と思ってた時にツィッターで流れてきたので読んでみました。
前に読ませていただいた「珍奇鉱物」が面白かったので、だいぶ期待しつつ。

やはり期待するのは、美味しいドーナツのお店の紹介ですが、関東を中心に日本全国にわたった紹介件数はさすがの圧巻。全部GoogleMapさまに登録させていただきました。近くに出たときは是非買い求めたいと思います。
一軒一軒の紹介も丁寧で、短いながらも特徴をきちんと書いてくださっているので、好みかそうではないかの手助けになりますね。こういう丁寧な記事づくりには好感が持てます。

ドーナツの歴史や、「穴」にまつわる四方山話は、単なるグルメ特集に収まらない、ユニークなエンターテインメントとして楽しいです。

そして「基盤」として大きく取り上げているのが「ミスタードーナッツ」!
アーティストや文筆家のコメントやエピソードなどを添えて大分大きく取り上げてらっしゃいます。
最近自分で買うようになるまで、あまり関心は無かったのですが、やはりミスドは凄い、というのを改めて見せつけられた感じです。

写真も相変わらず綺麗で構成も読みやすく、良い雑誌でした。
お勧め。
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武器としての世論調査 (三春充希著) [本と雑誌]


武器としての世論調査 ──社会をとらえ、未来を変える (ちくま新書)

武器としての世論調査 ──社会をとらえ、未来を変える (ちくま新書)

  • 作者: 三春充希
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2019/06/28
  • メディア: Kindle版



のんびり読んでいた本を読了。とても勉強になり、また面白い本でした。

先日行われた、第26回参議院議員選挙の際、かねてよりの活動として、投票率向上を目指して(むなしいとは思いながらも)SNS上での投票呼びかけを行っていた際、広げていたアンテナに流れてきた三春充希さんの著書です。

三春充希さんはデータ分析の専門家として、選挙や世論調査を分析することで、今の社会を「見える化」し、よりよい未来を描けないか、模索するという研究活動を続けつつ、その結果を広く公開して下さっています。

プロフィールURL:
https://note.com/miraisyakai/n/n692c491932bf

ツィッター:
https://twitter.com/miraisyakai

少しでも選挙や政治、社会問題に興味のある方はフォローをお勧めします。

なにかと不信感や、批判のやり玉にあがる、メディア各社による世論調査。
しかし、きちんと合理的な見方をすれば、それは政治や社会の流れを見通す目となり、自分の投じる一票を最も有効に活用するための武器となることを、この本は説いてくれています。

内容としては、まずは「世論調査とは何ぞや」というそもそも論から始まり、我々が何となく数字でしか見ていない世論調査というものが、どのような構造・意味を持つのかという基本から始まります。

続いて、世論調査から見えるものとして、与党や野党への支持・投票の傾向が何に左右されているか、どのような偏りがあるか、などなど、丁寧に解説されています。

また「内容を操作されているのでは?あてにならないのでは?」と、不審を持たれる世論調査が、どういう性格を持つもので、その偏りを踏まえたうえで、どのように読み解けば、社会を見る目の解像度が上がるのか、をガイドしてくれます。

最後の章では、これらを踏まえることで、自分の一票を最も活かす方法の提案がなされています。

この本を読むと「たかが一票、されど一票」という言葉が実感をもって感じられるようになるのではないでしょうか。

自分が読んでいて特に役に立つなと感じたのは、やはり最後の章にあった情勢報道の読み取り方ですね。なんだか抽象的でよくわからんと思っていた「優勢」「一歩リード」など、独特の言い回しからどの候補者に狙いを定めればよいかが、具体的にわかる内容だったので、今後活用させていただきたいと思います。

全体として、購入した当初は世論調査の勉強のつもりで読み始めた本書が、その実、この今の暗い世の中から、よりよい未来をつかみ取っていきましょうという、力強いメッセージ、呼びかけであることに驚きました。
ロジカルに数字やグラフを駆使しながら、根底にあるのは情熱なのだなというのが読み取れて、元気をいただけたような気がしました。

大変良い読書でした。おすすめ。
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BRUTUS(ブルータス) 2022年 6月15日号 No.963 [珍奇鉱物] [本と雑誌]


BRUTUS(ブルータス) 2022年 6月15日号 No.963 [珍奇鉱物] [雑誌]

BRUTUS(ブルータス) 2022年 6月15日号 No.963 [珍奇鉱物] [雑誌]

  • 出版社/メーカー: マガジンハウス
  • 発売日: 2022/06/01
  • メディア: Kindle版



のんびり読もうかと思っていたんですが、読み始めたら面白くて一気に読んでしまいました。

「ぽっと出のファッション誌が最近の時流に乗ってお気楽に鉱物特集組んだんだろー」ってナメてかかっててごめんなさい。ガチの良本でした。

タイトルは「珍奇鉱物」でウケ狙いのようですが、鉱物収集を入り口とした鉱物趣味を幅広く取り上げた1冊です。

何が良いってまず素晴らしい写真の数々です。鉱物収集は写真撮影との闘いである側面もあるのですが、これだけたくさんの見栄えの良い鉱物の写真がそろう一冊は、早々お目にかかれません。
写真に関しては鉱物写真家への取材記事も面白いです。大変勉強になります。

鉱物ファン垂涎のツーソンミネラルショーの詳細なレポートも素晴らしい。なかなか一般の鉱物愛好家は、外国のミネラルショー、それも長期滞在をしたいツーソンショーに出かけることはできず、その様子を良くレポートしてる本もなかなかないのですが、過去読んだ本の中では最もツーソンの空気を感じられるレポートだと思いました。

一転して国内で可能なコレクションとして、ユニークなのは、国内の鉱物ショップの紹介で、単なる宣伝ではなく「推し石」を紹介してもらうことで、店ごとのこだわりを実に魅力的にまとめてくださっているのが良いですね。

鉱山での鉱物標本切り出しのレポートはまさに鬼気迫るレベルで、僕らの手元に届く標本がどのように採掘されるのか。それを博物館級の最上の標本の採集と展示までのレポートとして臨場感たっぷりに伝えてくれるのは大変勉強になりました。

知識面では、鉱物の基本的なことを入り口に、コレクションを始める際の入門知識から始まり、果ては鉱物標本の歴史ともいえるラベルに着目したページなど、それぞれ入り口ながらもこれだけ幅広く取りあげてくれる本はなかなかない。

鉱物の広がりの面では、顔料として使われる鉱物の話や、インテリアとしての鉱物との親し見方、楽しみ方も魅力的に紹介して下さっています。

それぞれ入り口のような内容ではありますが、これほど幅広く鉱物、鉱物収集、そしてそこから広がる広い鉱物に関わる世界のガイド本として無類の1冊と言えるのでは。

お勧めの一冊です。
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