クリエイターとクライアントはなぜ不毛な争いを繰り広げてしまうのか? [本と雑誌]
クリエイターとクライアントはなぜ不毛な争いを繰り広げてしまうのか? (星海社 e-SHINSHO)
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2021/12/23
- メディア: Kindle版
読了しました。
最初に書いておくと、暴露本では無く、ちゃんとしたビジネス新書です。
(新書にちゃんとした、という言葉付けるもの変かもしれませんが、直感的なのでこう表現しておきます)
僕自身けものフレンズの監督降板騒動では少なからぬトラウマを負っているので多少期待したのは否定しませんが、福原さんはちゃんとしたプロデューサーなので(どこかの細い人とは違い)そういう内容じゃないだろうなとも思っていたので、特にがっかりはしません。
いわゆる「9.25」で時計が止まってしまったままの人にとってはつまらない内容だと思いますが、その後前に進んでちゃんとした仕事している人にはビジネス書として十分面白いのではないかと思います。
概要としてはタイトルの通りで、アニメやマンガ、ゲーム、音楽など、エンターテインメント業界でお二人が経験してきた不幸なもめごとの数々から見出してきた、一定の共通項「クエリエイターとクライアントの間のもめごとは、主にお互いがお互いを理解していない点から起こることが多い」ことを文章化(見える化)し、公知することで共通認識としていき、少しでも不幸なトラブルを減らしていければ良いな、という内容です。
章立てが論理立っており、よくできています。
まずはクリエイターとクライアントってこういうもんだよね、というざっくりとした全体像の紹介から始まり、クリエイティブなビジネスの工程である、準備、発注、納品、納品後、の、それぞれの順を追って、トラブルの事例や、それがなぜ起きるのか、防ぐにはどうしたら良いかの例示・提案、を対談形式で述べています。
読んだ感じ、福原さんが対談の相手に、やしろさん を選んだのは、これら困りごとを言語化できる人だからですね。まともにサラリーマンやってるビジネスパーソンならわかると思いますが「困りごとを言語化できる」というのは立派なスキルです。できない人はできないんだこれが。
まあでも、読んでみると「福原さんが対談相手を選んだ」というより、「お二人が一緒に仕事していているうちに「業界あるある」で共感して本にしようかという流れになった」のではないかと推察します。
土台がクリエイター業界なので、もちろんその筋の人に向けた内容ですが、ビジネス上での相互理解の重要さとその具体例と言うのは僕の居るIT業界でも同じく重要なので、業界外の方でも得るものが多い内容ですね。僕は素直にそのあたり大変勉強になりました。
個人的に面白かったのは「電話がかかってくるとクリエイターは緊張する」辺りで、僕も電話苦手なので、やしろさんの気持ちがすげえよくわかります(笑
脳みそフルで回しながらガギガリコード書いてるときとか仕様書書いてるときに電話かかってくると死ぬかと思いますね。
後は「クリエイターは請求書出すのに物凄いエネルギーがいる」と言うのも共感できます。
僕は業務でしょっちゅう請求書の処理をしていますが、それでもお金を扱うので緊張しますし、ましてや慣れてない個人営業のクリエーターの方は、やりたくねえだろうなあ、と言うのは推察して余りありますなー。
付録に、本文で紹介されていたヒアリングシート、リテイクシートの具体例があるのは良いですね。
僕らの仕事(IT系開発者)だとQA表が近いですが、こういうフォーマットって現場や業界ごとに工夫があるので、それを例示してもらえるのは、この業界の方は嬉しいのではないでしょうか。
対談形式なので文体も読みやすく、分量的にも1時間ちょっとで読めるので読みやすいです。
大変面白い読書でした。おすすめ。
クリエイター業界では、時々眺めているジョヴァンニワークスさんが公開してくれているYouTubeチャンネルの業界ハウツー動画とも重なる部分があるなあと思い、興味深かったです。
別件ですみませんが、あちらの動画もお勧めです。
2021-12-26 23:10
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