2001年宇宙の旅 [本と雑誌]
決定版 2001年宇宙の旅 (ハヤカワ文庫SF) 価格:¥ 840(税込) 発売日:1993-02 |
なんつーか、にわかSFファンなので、この映画もちゃんと全部見た事がなかったので、まずは予習編という事で小説の方を読んでみました。
クラーク先生の作品は、そのスケールの大きさに圧倒される事が多いのですが、この作品もその例に漏れず。
はるか太陽系の先、土星までの道のりを描いた後半はいうに及ばず、人類の「知性の芽生え」を描いた前半部も、なんというかその生々しい描写はショックを感じました。まさか文章で、知性の階をあそこまでシミュレーションさせられるとは・・・。
筋に関しては、すでに触れるまでも無いとは思いますが、自分の中の纏めのために軽く触れておきます。
人類の遠い遠い祖先が製造競争を闘っていたころ、太陽系外知性体に作られたモノリスが地球に到達し、地上の生物に知性の芽生えを促し、去っていってから数万年。
月基地を建設し、宇宙開発が本格化した頃、地球のティコ・クレーターの中に、地中に埋められたモノリスが発見されます。
まごうことなき地球外生命の証拠であるこの物体は、しかし極秘扱いとされ、二年後、有人土星探査船ディスカバリー号が太陽系の外れへと調査の旅に出ます。
当直の宇宙飛行士にすら秘密にされたその目的は、月のモノリスが発した信号の示した先、土星の衛星ヤペタスの調査でした。しかし、この秘密にされた事が悲劇を生みます。
ディスカバリー号の統御コンピューター、人類の手になる機械知性体HALは、この秘密を抱えているというジレンマに耐えられず、発狂してしまいます。そして乗組員の殺害と言う恐ろしい行為に手を染めるのです。
この辺り、機械知性のジレンマによる想定外行動は、以前読んだ、アシモフの「われはロボット」を彷彿とさせます。むしろ、アレを先に呼んでいたおかげですんなりと状況が頭に入ってきました。やはり本は色々と読んでおくべきですね。
さて、HALによって5人の乗組員のうち、実に4人が殺害されてしまい、唯一HALとの戦いに勝利し、生き残った当直宇宙飛行士ボー満は、遂にヤペタスに到着。生還の見込みが無い中、調査を続け、遂にこの衛星にもモノリスを発見した彼は、偉大な知性の招きに寄って別の宇宙へと転移、知性体としての階梯を一気に上り、新たな、宇宙の「赤ん坊」になるのでした。
なんというか。
物質文明を究めて精神世界へとレベルアップする、と言うSFはこれまでにもいくつか読んできましたが、そこへの階に立った人間、いや知性を赤ん坊として表現したのにはショックを受けました。なるほど、と。
実にイメージしやすいモチーフですね。映画でもこういう結末なのかは分かりませんが、映像を意識した面はあるだろうなあ。
終始押し寄せてくる、イメージの奔流に圧倒されるような本でした。ううむ、こんな小説って書けるもんなんだなあ。
宇宙の果ての探査船という、閉鎖空間で襲われる、発狂した統御コンピューターとの駆け引きも実に息詰まるものでしたね。このコンピューターの狂い方の描写も、理性的な、稚気あふれる、狂気、という複雑なもので、そこに揺らがず冷静に事態に対処するボーマンの構図も面白かったです。
そして最後、モノリス、いやスターゲートを抜ける彼の旅路も奇想天外で目を離す事ができませんでした。
いやはや、なんともヴィジュアルイメージに溢れた、面白い本でした。
これは映画も見ないといけないなあ。
2011-05-14 14:55
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