六つの航跡(上) [本と雑誌]
今月のSFノルマはムア・ラファティ。
ツィッターで作家さんから流れてきたので読んでみました。
恒星間旅行を続ける移民船の中で、六人のクローンが「再生」されて目覚める。
船の中には、「彼らの遺体」すなわちそれぞれの先代のクローンが、無残な姿となって漂っていた。
目覚めている乗組員は彼ら六人だけ。そして彼らには出航直前までの記憶しかなく、過去25年間に及ぶ航海の記憶が失われていた。
果たして惨劇の犯人は誰か。それぞれの正体は。
疑心暗鬼の中、それぞれがそれぞれに、過去に退治する。
宇宙船内という密室、記憶をなくした乗組員。
SFというよりも、嵐の館物の推理小説を思わせる恒星のお話です。
一方でクローンがある程度普通になり、死が一部克服された未来で、クローンや人はどういう考えを持つか、を、実に丹念にシミュレーションした、正統派のハードSFでもあります。
恐らく彼らのうちの誰かの手によって船のAIはクラッキングされており、また彼ら自身も、それぞれ記憶を失っているので、自分さえもが信じられない。疑心暗鬼ここに極まれりという恐怖。
彼らは恩赦と引き換えに乗り組んだ乗組員であり、全員が有罪判決を受けている罪人でもあります。誰が何をするか、まったくわからない。
いやはや、よくもまあここまで緊張感のある世界を構築したものです。
文体は異常に読みやすく、また内容も先が気になるのでページをめくる手に力が入りますね。
実にエキサイティングな本でした。下巻を読むのが楽しみですね。
2019-05-08 21:54
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