横浜駅SF [本と雑誌]
今月のSFノルマは柞刈湯葉。
カクヨムで投稿され対象取っちゃったという、いわゆる「なろう系」に分類される…と思うんだがやっぱり毛色が違うなあ。、まあ異色の小説です。
大正時代に開設されて以来、一度も工事が完了せず、常に何かしら工事して拡張を続けている横浜駅が、遂に自己増殖をはじめ、日本の本州全土を覆ってしまった未来が舞台という、パワー溢れる世界観です。
カクヨムには僕も何か書けないかと思って1作上げてすぐけしたこともあり、何か親近感があったのと、SFという題材、何よりおもしろそうだという事で読んでみました。
上記の通り、日本は横浜駅に占拠されており、駅が一つしかないのですでに鉄道は無く、世界は改札の内側であるエキナカと、それ以外のわずかな土地にほぼ二分されています。
読み進めていくと他のJRとかも登場するので世界は広がっていくのですが、基本的にはクローズドの空間で展開されるので、密閉都市型のハードSFのような世界観になりますね。
そもそもの着想のセンスも素晴らしいですが、随所に鉄道ネタやJRネタがちりばめられた親近感の湧く世界の構成力には素直に脱帽いたしました。なんだこのリアリティ。現代東京に住むサラリーマンにはリアルすぎて笑えないあたり、ある意味怖いですね。
題材が題材なのでトンデモ小説亜kと思いきや、もちろんそういう側面もありますが、それよりもかなりの深みと広がりを持ったSF要素がちりばめられており、それと身近な駅ネタが融合する様は、なんというかこれまでに無い読後感を味あわせてくれました。
主人公と言える登場人物はいて、彼を中心に描かれる物語ではありますが、どちらかというと、主人公の目を通してこの独特の世界観を僕ら読者の前に展開してくれる、といった構成の物語です。
そしてその中で生きている人間たちや無機物たちが、なんともいとおしいと感じるお話でした。
怖いもの見たさ半分で読んだ小説ですが、間違いなく面白かったです。
文体が難しくないので、比較的手軽に読めるハードSFと言えるでしょう。お勧めです。
2017-12-18 21:38
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