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宇宙の小石 [本と雑誌]


宇宙の小石 (1966年) (ハヤカワ・SF・シリーズ)

宇宙の小石 (1966年) (ハヤカワ・SF・シリーズ)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2020/10/15
  • メディア: -



今日は休養のために休暇を取っていたので久しぶりにゆっくり読書。大好きなアソモフ御大の長編です。

舞台は遥か銀河文明華やか利子時代、宇宙の片隅に、小石のように忘れられた地球。

このころの地球は人類発祥の地であることもとうの昔に忘れ去られ、妙なプライドと猜疑心を抱えた地球人たちと、彼らを見下す銀が沁みんという構図の社会になっています。

放射能で埋め尽くされた地表は食料生産に適さず、「60台の掟」により60歳を迎えたもの、もしくは何らかの理由で働けなくなったものは無差別に安楽死させられ、次代に資源を譲るという仕組みになっています。

ある日、現代の地球から突然タイムスリップした仕立て屋のご隠居さんがこの世界に放り込まれるところから話が始まります。

最早英語も通じない社会で市民登録もなく、途方に暮れる御隠居は、たまたま「60の掟」にこっそり背いた秘密のある農家だったが故に保護され、処置に困ってある人体実験の志願者として都会に連れていかれるのです。

この実験は人の脳の働きを劇的に上げて知能をあげるものだが命の危険が非常に高いもの、とされていて、物語の重要な1ピースとなっているのですが、それはなかなか終盤までわかりません。

御隠居さんがスペース・ヒーローのごとく活躍するかというとそんなことはなく、痛快劇という要素は薄いですが、複雑に絡み合った人間それぞ載れの思惑と、恐るべき偶然の成り行きにより、彼と彼を取り巻く人々は、銀河帝国滅亡のカウントダウンに巻き込まれていくのです。

終盤こそ、アシモフらしい痛快劇になっていますが、この物語の主題はどちらかというと上記のようなディストピア社会を描くことにあるように思います。

次々舞台を変える物語は、それぞれへの好奇心を引っ張ってくれるのでなかなか刺激的でエキサイティングでした。

解説によると、アシモフ御大の代表作「ファウンデーション」シリーズを補完する外伝的な作品とのことで、ウウム、さすがにあれをそろそろ読まねばならない時期に来ているか。SFは単巻のが好きなのだが、とはいえ面白いことは折り紙付きだしなあ。どこかで買い揃えよう。

外伝とはいえ、これ1冊単独で十分以上に面白い作品でした。おすすめ。

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