鬼桐さんの洗濯 (3) [アニメ・コミック・ゲーム]
鬼桐さんの洗濯【カラーページ増量版/特典ペーパー付き】 (3) (バンブーコミックス)
- 作者: ふかさくえみ
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2020/07/17
- メディア: Kindle版
届いていたものをのんびりと読了。シリーズ三冊目です。
ふかさくえみさんの作風は前から好きですが、新作を読むたびにその思いを強くして頂けるのは何だろう、不思議な感じですね。
(主に)妖怪向けのクリーニング店を営む鬼の鬼桐さんと、人間の茶子さん(霊感?あり)のバイト物語。
ストーリーはバラエティ豊かなお客様が持ち込むそれぞれの洗濯物を、専門的な洗濯知識を織り交ぜて選択しながらお客様や洗濯物に込められた物語を垣間見るというものです。
おおむねコメディですが、キャラクターを通したふかさくさんの視点が非常に面白く、よくあるエピソードの意外な一面が垣間見れるのが毎回楽しみですね。
選択知識も確かな勉強と研究の成果で専門の選択・洗剤業の方々からも絶賛されるというすごさ。
作中の洗濯の様子も、まさに「選択とは科学だ」を地で行く感じで納得感があり、勉強になります。この辺り、漫画としては本来エブリディマジック系の本作が、ちょっとSF漫画づいてくるところですね。そういえばふかさくさんはSF描く人でした。
挙句の果てには作者が3巻までの間にクリーニングの国家資格を取得するというから、もうこれは作者が真面目に描いていることを疑うよりはありませんな。ガチです。ガチの洗濯漫画です。
おなじみなのは様々な妖怪のお客様ですが、今回特に面白かったのがヒーローのお客さん。クリーニングの視点からヒーロー業を見たことはなかったので(当たり前だ)新鮮で面白かったです。
今回は鬼桐さんのお姉さんも登場し、お話は何かの核心に近づくのか、そうでもないのか(笑
まだまだ続いてほしい物語です。でも、よろしいところでたたんで欲しい物語もでありますね。不思議です。
凄く面白かったです。おすすめ。
眩暈 [本と雑誌]
お久しぶりの日記はSFノルマのお話。
とはいえ仕事が在宅オンリーになって生活リズムが変わったのと、シナリオっもう書かないのでノルマって感じではないですが。
前から読んでみたかったボブ・ショウの本が先日3冊ほど手に入ったので手始めに。
半重力飛翔具により、個人の飛行がカジュアルになった時代。
職務の結果航空からの落下で心身にひどいダメージを負った、元航空警察官のロブは、壊れ切った心を癒すために海外の知人の警官のもとに身を寄せます。
そこには巨大なタワーホテルのなりそこないがあり、珍走団の空版である暴翔族のたまり場となっていました。
物語は飛翔具による空への葛藤と、無軌道な若者、タワーの地主で在り過去の栄光にしがみつく老人、実直な知人警官を中心にめぐっていきます。
主にロブの視点で語られる物語は、傷ついた彼の心を通した世界が、回復に従って様変わりする様子がありありと描かれています。
老人の誇大妄想が警官の責務と衝突する中、ついに決定的な事件が起き、多くの人が、多くのものを失うこととなるのです。
ロブは冒頭傷つき疲れ果てているので、まるで「アルジャーノンに花束を」の冒頭を読んでいるような、世界は不明瞭なものであるといった感じを受けますが、彼が回復するにつれて、そして彼の回り、というのはすなわち彼の知人警官であるウィリーの周りの人間関係が明らかになるに連れて色彩を帯び、はっきりしてきます。
半重力装具というSFガジェットは出てきますし、読んでいくうちに、これはひょっとして物凄いギミックなのでは、という感じを受けるのですが、物語は人間の心理を追っていく内容なので、ロブという人間が個人飛行とどう対峙していくか、を克明に描いていると思いました。
序盤はそうでもなかったのですが、読み終えてみると非常な満足感を得る本です。終盤の展開が素晴らしいですね。
エキサイティングな読書でした。おすすめ。