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六つの航跡(上) [本と雑誌]


六つの航跡〈上〉 (創元SF文庫)

六つの航跡〈上〉 (創元SF文庫)

  • 作者: ムア・ラファティ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/10/11
  • メディア: 文庫



今月のSFノルマはムア・ラファティ。

ツィッターで作家さんから流れてきたので読んでみました。

恒星間旅行を続ける移民船の中で、六人のクローンが「再生」されて目覚める。

船の中には、「彼らの遺体」すなわちそれぞれの先代のクローンが、無残な姿となって漂っていた。

目覚めている乗組員は彼ら六人だけ。そして彼らには出航直前までの記憶しかなく、過去25年間に及ぶ航海の記憶が失われていた。

果たして惨劇の犯人は誰か。それぞれの正体は。

疑心暗鬼の中、それぞれがそれぞれに、過去に退治する。


宇宙船内という密室、記憶をなくした乗組員。

SFというよりも、嵐の館物の推理小説を思わせる恒星のお話です。

一方でクローンがある程度普通になり、死が一部克服された未来で、クローンや人はどういう考えを持つか、を、実に丹念にシミュレーションした、正統派のハードSFでもあります。

恐らく彼らのうちの誰かの手によって船のAIはクラッキングされており、また彼ら自身も、それぞれ記憶を失っているので、自分さえもが信じられない。疑心暗鬼ここに極まれりという恐怖。

彼らは恩赦と引き換えに乗り組んだ乗組員であり、全員が有罪判決を受けている罪人でもあります。誰が何をするか、まったくわからない。

いやはや、よくもまあここまで緊張感のある世界を構築したものです。

文体は異常に読みやすく、また内容も先が気になるのでページをめくる手に力が入りますね。

実にエキサイティングな本でした。下巻を読むのが楽しみですね。
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