毒ガス帯 [本と雑誌]
今月のSFノルマはサー・アーサー・コナン・ドイル
シャーロックホームズシリーズと並ぶ、ドイルの代表作です。
絶版なのでなかなか読む機会に恵まれませんでしたが、たまさか安価な古書が出ていたので読むことが出来ました。
収録は表題作のほか、3編で、どれも希代のマッドサイエンティスト、チャレンジャー教授が縦横無尽に活躍する物語です。
語り手は主に、彼の友人である新聞記者のまろーんが受け持つのは、ホームズシリーズでワトスンが語り手になる構図に似ていますね。
チャレンジャー教授は、控えめにいって人格破綻者なのですが、その発想と知能は二人知を超えたところがあり、まさに天才となんとやらは紙一重を字で行く変人です。
一方で、彼によくついていく妻には深く思いやりのある、揺るがない愛情を抱いているなど、人間臭いところもあり。
そのあたりのギャップが、読者も、枯野を取り巻く友人たちをひきつける魅力となっているのかもしれません。
表題作は、宇宙のエーテルに含まれる猛毒の霧の中に地球がすっぽりと覆われてしまう、人類滅亡の週末世界を描いた中編。
のっけからとんでもないテーマですが、彼と仲間たちは、勇敢に立ち向かってゆきます。
2編目は「地球の悲鳴」
地球を、巨大な一個の生命であるとみなした教授は、莫大な費用と労力をかけて地表という地球の生皮をはがし、下に生まれた「地球の肉」を一撃して、地表にうごめく細菌である人間の存在を、地球に知らしめようと試みます。
結末は、これまた驚天動地の話となるのですが・・・
最後の一遍は「分解気」
あらゆるものを原子のレベルに分解し、また再構成するという偉大な発明を成し遂げた、教授に勝るとも劣らないマッドサイエンティストと、チャレンジャー教授が対決する物語。これまた刺激に満ちた作品でした。
全編を通して、チャレンジャー教授という強烈な個性がけん引する物語、といった印象です。
文体や語り口などは、同時代のSF作家、ジュール・ヴェルヌにも似ている感じがしましたが、この辺りは時代の特徴なのかもしれません。
事件の奇想天外なアイデアの数々は予想もつかない感じで、当時よくもまあこんなことを考え付いたなあと思う次第。さすがホームズを生み出した作家さんですね。
非常に面白く、探したかいのある一冊でした。
同じく絶版のチャレンジャー教授シリーズ「霧の国」も、ぜひ読みたいですね。