万華鏡 [本と雑誌]
今月の、というか先月のSFノルマはレイ・ブラッドベリ。
先月の退職のごたごたと糸魚川旅行からの怒涛の体調崩しで読めていませんでしたが、ここ二日ぐらいで一気読みしていました。やあ分厚い分厚い、満足の読み応え。
ブラッドベリは長編も好きですが短編の方が好きでして、その作家の自洗短編集ということで楽しく読ませていただきました。
過去に読んだ作品も含まれていますが、編が違うと結構新鮮な気持ちで読めるものですね。
20本以上の短編が納められ、表題作の「万華鏡」も収録されておりますが、まさしく万華鏡のような色とりどりの作品集です。
ジャンルもSFに限らず、ファンタジーからスリラー、詩文に、果ては今でいう伝奇もののような怪奇な作品まで多彩です。
あらためて、この作家の個性を垣間見た気がします。解説にもありましたが、ブラッドベリはジャンルをはみ出した作品を書いてしまう傾向があるので、それを味わうには良い一冊と思いました。
好きな短編は、いくつもありましたが、前にも読んだ「万華鏡」がやはり。
爆発したロケットから放り出され、なすすべもなく宇宙空間へ散っていく宇宙飛行士たちが、通信が途切れるまでの間思い思いに発言するこの作品は、触れることも見ることもできないが声だけが通じるという一種奇妙な舞台設定が面白く、はかなく。
「すばらしき白服」は、ダウンタウンの貧民層の若者たちが、ヴァニラアイスのような純白のスーツを着こなすことにあこがれ、サイズの同じ六人で有り金を出し合い、一着の白スーツを買うというお話。
届かない世界の粋な着こなしにあこがれる彼らのさまは、何か他人事という気がしない奇妙な親近感を覚えるもので、面白かったです。
ほかにも珠玉の作品が納められているので、ぜひご一読ください。
非常に楽しい読書でした。