アルテミス(上) [本と雑誌]
今週のSFノルマはアンディ・ウィアー。
あの「火星の人」を世に送り出した鬼才の新作でございます。とりあえず今月は上巻で。
今回の舞台は月。
すでに月面への植民が安定して行われており、観光地化されている世界でのお話。
何かと「質量を運ぶ」ことに価値が出る月面ドームで、ポーターとしてやくざな仕事を引き受ける女性、ジャスミン・パシャらが主人公です。
若さゆえの様々な過ちからドロップアウトしてしまった彼女は、多少危ない事にも手を出しながら、いつか憧れのマイホームを手に入れることを夢見て日々仕事に磯損でいます。
そんな彼女が、密輸のお得先である富豪から、とあるビジネスを頼まれたことから、得体のしれない事態の渦に神込まれていく様を描いています。
その仕事というのが、月面の生命線である、巨大な4台の自動ブルドーザーを完膚なきまでに破壊すること。
さまざまな障害から、一見不可能と思われるこの仕事を、彼女は大分いいところまで進めるのですが・・・
上巻ではこの破壊工作がクライマックスになっています。
実際月面での活動や資源などにはかなりリアリティのある展開がなされており、ハードSFとしてかなりの完成度を感じます。
加えて「火星の人」で楽しませてくれた、軽ような一人称の語り口も健在で、大変楽しく読まsていただきました。
ジャスミンは、道徳的な観念はかなりダメですが、ビジネスとなると信用第一、取引は裏切らないという、かなり偏ったキャラクターをしており、そこが妙にリアリティがあって親しみがわきます。
彼女の視点を通して描かれる月面社会の様子や、諸々の新たな文化などは、欲シミュレーションされていると感じましたし、読んでおて面白かったです。
早速下巻を買って来月のSFノルマに備えようと思いますが、上巻でのっぴきならない状況に追われることとなった彼女の行く先がどっちに向かうのか、楽しみですね。