さあ、気ちがいになりなさい [本と雑誌]
今月のSFノルマはフレドリック・ブラウン。
この作家は長編も好きですが、短編はより好きなので、この短編集も面白かったです。
収録されているのは、SFはもちろん、神話のような話や、奇想天外な逆説ミステリとも言えそうなものまで、ブラウンらしいバリエーション豊かな内容となっています。
またバリエーションだけでなく、ある短編では人類を素晴らしいものとして描いたかと思えば、別の短編では人類を取るに足りないバクテリアのようなものとして描いたりと、価値観のジェットコースターに揺られているかのようなとんでもなさもありました。
表題作の「さあ、気ちがいになりなさい」は、中編と言えるボリュームの作品。
現代のアメリカに、精神のみの転生を果たしたナポレオンが、彼の視点から、彼の末路を語るという筋の話。
精神転生の謎を解き明かす話かとおもいきや、話はあれよあれよと、みるみるスケールの大きな話に展開していき、最後はタイトル通りの台詞で締めくくられるという、ブラウン御大の名調子がさえわたる作品で面白かったです。
他に印象に残ったのは「みどりの星へ」という短編ですね。
宇宙船の事故で、未開の惑星にたった一人残された男が、地球の緑を狂おしく恋焦がれながら救助を待つ話でした。
この世界では、緑の色彩を持つのは、宇宙広と言えども地球しかなく、遭難した惑星でも紫色ばかりの色彩に苦しめられながら、わずかな希望を頼りにサバイバルを続けていくのです。
そんな彼のもとに、奇跡的な偶然から、救助の船がやってくるのですが・・・
なんとも鮮烈な印象を与えられる話でした。
ブラウンの短編はやはり面白いですね。また本を探して読んでみたいです。
良い読書でした。