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シカゴ・ブルース [本と雑誌]


シカゴ・ブルース (創元推理文庫 146-15)

シカゴ・ブルース (創元推理文庫 146-15)

  • 作者: フレドリック・ブラウン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1971/01
  • メディア: 文庫



僕が読んだのは、昨年の神田古本まつり(http://tenkamutekinomuichi.blog.so-net.ne.jp/2017-11-03)で仕入れてきました1971年版の初版なので、リンク先の新装版とは違うのですが。

フレドリック・ブラウン御大のミステリ作品。

タイトル通り、犯罪都市シカゴを舞台にした、スリルとサスペンスの読み物です。

主人公は、活版印刷工の見習いとして働いているエド・ハンター青年。

彼の父親が、シカゴの裏路地で、何者かに殴り殺されたところから、物語は始まります。

復讐に燃えたわけでもないですが、彼は自分でもよくわからない衝動に突き動かされて、遠くのサーカスで旅芸人をやっているアム叔父のもとのその晩のうちに向かい、父の死を報告。

アムは、弟であるエドの父の犯人を突き止めるため、エドと共に事件を追い始めるのです。

この物語には、よくあるような名探偵や、スーパーコップのようなヒーローは登場しません。

エドもアム叔父も、アメリカ下層階級で這いずるように生きている、普通の人です。ですが、ハンター家の者、という一言を胸に、猟犬のような執念で事件を追い続けるのです。

それはそれほど長い期間ではありませんでしたが、ごく普通の、朴訥な青年であったエドが、一人前の男として急激に成長する一週間でもありました。

最終的には、ミステリらしく、意外な事件の真相が語られますが、それは決して痛快なものではなく、むしろ後味の悪い、やりきれないものであります。

ですが二人とともに事件を追っていた読者にとっては、其れよりも重要な何かが、この物語には秘められていることに、もはや疑問の余地はないのです。

全編昏く、泥臭さの漂う物語ですが、そこには確かに人の生きざまがあり、命がある、損な物語でした。


面白かったです。良い本でした。
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